FAVORITE

beck/odelay
ジャンルなんてものは勝手に俺らが偏見でもって作り出したものに過ぎないと思わされた90年代に残る名盤。多様化し始めたロックシーンに現れるべくして現れたベックは、前作を出した後は一発屋という意識があったそうです。そんな意識を払拭したこの作品の、リスナーを飽きさせない14曲は当時の人たちにとってどんなインパクトを与えたのでしょう。俺は今から3年ぐらい前に知ったので、こんな音楽もあるのかとちょっとうれしくなったぐらいですけど。ローファイ的な、あるいはグランジ的な、雰囲気はかすかに感じるものの、ぐにゃっとした、一筋縄ではいかないメロディーは聴きごたえがあるにもかかわず聴きやすいです。中身のない軽さが感じれないこともないですが、彼が彼なりに追求した音楽の重さは確かにあり、おしゃれともいえるセンスもあり、ブルースの泥臭い感じもあります。なんとなくですが、洋楽を聴き始めてすぐには手にとらないほうがいいかも。だいぶ耳が慣れてきたころに聴いたほうが、長く愛することができそうです。あるいは「ミッドナイトヴァルチャーズ」や「ミューテーションズ」を先に聴いてみたり。あと、クラブ系とか。でも、とにかく飽きないです。
去年あたりベックの再来みたいに登場してきた「シンプルキッド」は一発屋としか見れないのは俺だけでしょうか。
bob dylan/the freewheelin'
ボブディランのセカンドアルバム。かなりアコースティックな仕上がりになってます。フォークの金字塔的な作品として残っている感じがします。しかし、全体的に華やかなイメージよりかは泥臭くてブルージーなイメージを持っています。純粋に「歌」と「ボーカル」と「音色」をシンプルに聴くべき作品であって、「素」な感じを堪能することができる名盤だと思います。社会的な当時の状況、音楽的状況など、名盤となる作品にはいろんな逸話が付きまとっていますよね。そんな逸話はどのアーティストにも有名になればなるほど出てくるものだと思いますが、それは音楽を聴くにあたってさして重要なことではなく、当時の風景や取り巻く状況をなんとなくつかむことが俺には精一杯です。ただ彼の声を歌に乗せて聴き、歌詞の意味を知っていけば、音楽でリスナーに訴えかけようとする彼の気持ちが、感じ取れるような気がするんです。活字より歌のほうが説得力がありそうな、そんなふうに思わせる作品かもしれません。M−1、3、5、7、8が好きです。
chemical brothers/dig your own hole
ケミカルブラザーズのセカンドアルバム。ロックとテクノ。合わさるとこうなるのかと思った一枚です。当時、テクノのことを何も知らない俺はこれがテクノだと思っていました。「なんかテクノって、ロックっぽい」と。デジタルなビートと生音っぽいドラムのリズムがテクノってことか〜って。でも、その意識もアンダーワールドやマッシブアタックなどを聴くことで徐々に変わり、これはケミカルブラザーズの音楽だったと感じました。テクノとロックのファンを同時に取り囲み、なおかつUKロックファンも道連れにしたのはだれだとアンケートにしたら上位に食い込むこと間違いないです。個人的には1位ですが。
彼らはサイケデリックな後期のビートルズが好きで、確かにそんな感じあるかもって思います。言われてはじめて思ったんですけどね。混沌とした雰囲気はビートによってぶっ壊されるけど、周りに破片が残っていて、その粒子が一粒ごとにまだ確実に残っていて、ノリがいいだけでは収まっていないグルーヴ感。あるいはぶっ壊されたふりして、ビート自体がその雰囲気を飲み込んだみたいな。いつ聴いてもかっこいいです。
derek and the dominos/LAYLA and other assorted love songs
70年発表、エリッククラプトンが中心となって活動をしていたデレクアンドドミノスの唯一のオリジナルアルバムです。これが正真正銘、どこからどう聴いてもロックの名盤とされるものの一枚だと思います。全体を通して陽性の曲調がふんだんに感じられ、ギターのメロディアスなプレイは古臭いロックだと敬遠していた人たちを虜にしてしまうようです。ブルースに興味があるけど、ロックっぽいのから入っていきたい人にとって、最良のガイドになると思います。デュアンオールマンが参加しているからなのでしょうか、アメリカの南部っぽいサウンドの気持ちいい感じが伝わってきます。ザ・バンド好きな俺にとっては、こんなに安らげる期待通りのロックアルバムはないです。キャッチーなギタープレイで日本でもCMに起用されみんなどこかで聴いたことがあるM−13「いとしのレイラ」が突出しているかと思いきや、他のどの曲も十分に聴きごたえがあります。自分の耳がブルースが心地よいサウンドに変わるように対応するためには、避けては通れない作品の一つだと思います。
hanaregumi/on(sound) time
スーパーバタードッグの永積タカシのソロプロジェクト、ハナレグミのファーストアルバムです。アコースティックのやさしいメロディー、耳にすっと入ってくる感じは日本では彼以外あまり知りません。例えば、キリンジや曽我部恵一にも同じような感じはあるかもしれませんが、こちらはこの二つのアーティストには十分に感じられない「懐かしさ」があります。レトロといえばレトロですが、昭和くさいとかそういうことではなく、木のにおいや自然のかおりといったような、手作り感があるような気がします。いつものスタイル、生活の中をギターでやさしいメロディーに変えてくれることで、その生活がどんなに騒がしくても、どんなにつらくても、どんなにつまらなくても、それで十分な気になってしまいます。その魔法はこのアルバム全体に包まれていて、満たされた気持ちになることが聴き終わったあとには約束されているようです。でも、満たされているんですが、そこには悲しみや葛藤が含まれている、そんな感じも個人的には感じてしまいます。
happy end/happy end
1970年のデビュー作品です。俺がはっぴいえんどを知ったのはごく最近です。たぶん俺の年代(22歳)であれば同じように知った方も少しはいると思いますが、ロストイントランスレーションのサントラで、初めて聴きました。それに収録されていた「風を集めて」が入っている「風街ろまん」を最初に手にとるのが普通でしょうが、中古屋によく行くこともあって、中古で見つけたのがこの通称「ゆでめん」だったんです。ジャケットから昭和のにおいがぷんぷんですが、細野晴臣、大滝詠一らが在籍していたバンドということもあり、現在でも高い評価がありますよね。「日本語ロック」をつくったのが彼らということですが、その時代のアメリカに影響を受けているのはすぐにわかりました。特に、ザ・バンドは非常に好きなので一発でわかりました。そうはいっても、日本でこれをやったのはかなり意味があったんでしょうね。いや、意義が。レトロな雰囲気(古いから当たり前ですが)が好きであるのもあるんですが、なにかところどころに今でもありそうな感じは全然ありますね。メロディーもいいんですが、特に歌詞が当時の雰囲気をうまく出していて、情景が伝わってきて、なんともいえません。文学性も感じました。M-1、3、7、10。
hole/celebrity skin
グランジの象徴バンドの一つ、ホールの98年発表サードアルバムです。もうこのころにはグランジの全盛はだいぶ過ぎており、作風もポップな仕上がりになってます。これまでの作品にはない、即効性の高いキャッチーな曲がそろっていて、グランジを脱却したオルタナティブバンドって感じになっています。また、スマッシュパンプキンズのビリーコーガンが曲を提供しており、そのあたりも広がりのあるロックになってる一因かもしれないです。これが一本筋の通った完璧なUSオルタナティブバンド!って感じがします。からっとした90年代アメリカのにおいがぷんぷんして、それが今聴いても全然聴けるといった、時代の名盤ではあるのですが、まだまだ語り継がれるのは早い、十分に今のバンドに劣らない良質な曲がそろっています。正直こういう系統のバンドはそんなに持っていないんですが(ニルヴァーナも持ってないし)ホールのこのアルバムは、毎年どんどん出てくるアメリカのバンドが多くいる中で、個人的にこれさえあればとりあえず最近のオルタナティブロックはいいかなって思えるものになっています。出だしM-1からM-4までの流れが好きです。M-9も名曲です。


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